NAP策定への意見:サプライチェーン

ビジネスと人権に関する行動計画(NAP)策定への市民社会からの意見書

(2020年1月23日)

【現状と課題】

  • 日本企業のサプライチェーン対応(CSR調達)は、2001年頃より取り組まれてきたが、近年においても積極的に推進している企業は多くはない。企業がサプライチェーン対応を推進させるには、①消費者団体、国際NGO、メディアからの要請、②国際的な枠組み、ガイドライン等による要請、③企業の経済活動からの要請、その具体化としての調達基準、という大きく3つの要因があると考えられる。
  • この3要因に関しては、未だ欧州、米州での要請が強く、日本企業は現地での経済活動を行わない限り、要請を受ける機会は多くはない。
  • 昨今、欧州、米州企業の東南アジアにおけるサプライチェーン上で起こっている人権への負の影響に対して、解消に向かわせる対応が、以前にも増して活発化している。特に移民労働者にかかる問題に関しては、企業のみならず、国際的NGO、送出し国および受入れ国政府、また、国際機関を巻き込んだ具体的な救済手段について議論と活動を行なっている。
  • そのような議論や活動に、日本企業が参加していないことにより、サプライチェーン対応(CSR調達)の必要性の理解や対応の遅れが進んでいる。また、東南アジア企業は欧州、米州企業の要請や活動の影響を受け、いまや日本企業のサプライチェーン対応より、評価が高い企業も散見される。
  • 日本企業が対応を推進しないことは国際市場での経済的競争力が低下してしまうことになるとともに、サプライチェーン上で関係する労働者や地域住民の人権への負の影響への懸念も解消に向かうことはない。

【NAPへの提言】

  • 国連指導原則が定める「保護・尊重・救済」という「三つの柱」から包括的に政府の取組が要求されると理解すると、政府として日本企業のサプライチェーン対応(CSR調達)を推進するためには、いくつかの推進力となる事項があると考えられる。例えば、サプライチェーン対応(CSR調達)を善管注意義務違反の対象とすることで法的拘束力を与えれば、サプライチェーン対応(CSR調達)に企業は真摯に取り組み始めると考えられる。また、こうして企業経営の重要要素となり活発化すると、欧州・米州市場において、日本企業の経済成長も期待できる。
  • NAPにおいても、ガイダンスやツール類の作成といった企業への支援とともに、例えば、デューディリジェンスを実施する為の補助金制度や税制優遇処置なども一考すべきである。また、苦情処理窓口の設置や救済処置を行う、プラットフォームの構築や支援も必要である。こうした多方面からの施策への言及が求められる。

一般社団法人ザ・グローバル・アライアンス・フォー・

サステイナブル・サプライチェーン〔ASSC〕