指導原則とNAP

 2011年6月に国連人権理事会で全会一致で承認された「ビジネスと人権に関する指導原則」は、これまで世界に大きな影響を及ぼしてきました。2013年には「指導原則」の各国での実施のために、「ビジネスと人権に関する国別行動計画」(National Action Plan)の策定が要請されました。このNational Action PlanをNAPと呼んでいます。国連ワーキンググループのNAPガイダンスでは、NAPを「企業による人権への負の影響に対して、国連のビジネスと人権に関する指導原則に適合するよう人権を保護するために国家が策定する、常に進化する政策戦略」と定義しています。

ビジネスと人権に関する指導原則

 国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」では、企業活動による人権への負の影響(人権侵害)を世界からなくすため、国家には「企業による人権侵害から個人を保護する義務」を、企業には「事業活動において人権を尊重する責任」を求め、実際の人権侵害に対しては救済を国家と企業に求めています。

 例えば長時間労働などの過酷な労働、児童労働や強制労働、ハラスメント、外国人労働者の権利侵害、女性や性的マイノリティの問題などの労働現場の問題や、消費者の権利の侵害、市民のプライバシー侵害、開発プロジェクトにおける地域住民の権利侵害など、「人権への負の影響(人権侵害)」は広範な問題を含みます。また、これらの問題は、国内とともに国内に本拠をおく企業による国外での問題も含み、企業規模の大小に関わりません。日本政府は「ビジネスと人権に関する指導原則」への強い支持を表明していますが、NAPは政府が実際にそれを実施していく際に導きとなる重要な計画です。

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