ビジネスと人権NAP市民社会プラットフォーム 設立趣意書
劣悪な労働環境、児童労働・強制労働、土地収奪、環境破壊に伴う地域住民への悪影響など、企業の事業活動による人権侵害は、現在もなお世界各地で繰り返されています。2011年に国連人権理事会で承認された「ビジネスと人権に関する指導原則」は、このような深刻な現実に対し、国家と企業の役割を明確にしながら解決への道筋を示そうとするものでした。2013年には国連人権理事会で、その「指導原則」を各国で具体的に実施するための行動計画の策定を検討するよう、ビジネスと人権に関する国連ワーキンググループから各国に要請がなされ、以降2017年1月までに世界の13か国で「ビジネスと人権に関する国別行動計画(NAP)」が策定されるに至っています。
日本政府はこの間、「国別行動計画」策定の意思を示すことがなかったため、私たち市民社会のメンバーは2016年5月のG7伊勢志摩サミットに際しても、日本政府がすみやかに「国別行動計画」を策定することを要請してきました。しかしその後、同年11月に「国連ビジネスと人権フォーラム」(ジュネーブ)の場で、日本政府から「国別行動計画」を策定する旨が表明されました。また同年12月には、政府の「持続可能な開発目標(SDGs)を達成するための具体的施策」において、「国別行動計画」の策定が具体的な施策課題として掲げられ、日本でも「国別行動計画」が実際の策定プロセスに入ることとなりました。
「国別行動計画」は、「指導原則」に基づき、企業による人権侵害をなくすためのものでなければなりません。そのためには、当事者である人権侵害の被害者や市民社会をはじめ、関係するステークホルダーと十分に協議しながら策定することが不可欠であり、このことはビジネスと人権に関する国連ワーキンググループからも「国別行動計画ガイダンス」の中で強く求められています。その際、「指導原則」が対処を求める企業による人権への負の影響(人権侵害)の範囲はきわめて幅広く、サプライチェーン上の現場から職場や消費者、市民生活に至るまで、国内・国外を問わず企業のバリューチェーン全体に及びます。
日本政府が「国別行動計画」の策定プロセスに入った現在、私たち市民社会のメンバーは、深刻な人権侵害の現実にそれぞれの視点から関わってきた立場から、「国別行動計画」の策定プロセスにエンゲージ(参画、協議)していく必要性と責任を強く自覚し、「ビジネスと人権NAP市民社会プラットフォーム」を設立しました。私たちは、「指導原則」に基づき、日本における政府・企業の役割と責任の明確化と救済アクセスの確立を目指す、適切かつ実効的な「国別行動計画」策定を求めるとともに、課題の幅広さに対応した広範囲な市民社会の参画を実現するため、市民社会としての提言活動、関係する多様なステークホルダーとの対話・連携の促進、ビジネスと人権に関する理解を促進する活動等を行っていきます。
2017年2月 ビジネスと人権NAP市民社会プラットフォーム
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