ステークホルダー共通要請事項(2019年11月)

2020年1月23日に開催された「ステークホルダー報告会」で、「ステークホルダー共通要請事項」が発表されました。NAP策定プロセスに参画してきた作業部会構成員・団体によるこの5分野にわたる「共通要請事項」は、2019年11月に日本政府に提出されています。

※ 以下の共通要請事項本文では次の略語が使われています。

  • 「人権DD」→「人権デュー・ディリジェンス」
  • 「NCP」→「各国連絡窓口」(OECD多国籍企業行動指針に基づき、同指針の普及、同指針に関する照会処理、問題解決支援のため、各国におかれている連絡窓口)

※ 末尾から、要請書を加えた詳細版PDF(日本語/英語)をダウンロードできます。



ステークホルダー共通要請事項

 

2019年11月21日

ビジネスと人権に関する行動計画に係る作業部会

ステークホルダー構成員一同

■企業情報の開示:

 

 政府は、ビジネスと人権の課題に取組む企業の企業価値と競争力向上のため、人権DDの実施やその結果に関する情報その他の関連取組みに関する情報の開示を促進する。具体的には、情報開示に関するガイダンス策定(価値協創ガイダンスとの結びつきも明確化する)、相談窓口設置、ポータルサイトの設立を行い、指針や好事例の提供を行う。情報開示の義務化については、その妥当性や是非も含めて継続的検討事項とし、当該検討にあたっては企業規模を考慮する。

 

■外国人労働者:

 

 政府は、法の下において、すべての外国人労働者の人権(平等及び労働に関する権利を含む)を保護する。政府は、外国人労働者の劣悪な労働環境や権利侵害の事例が報告されていることを受け、その権利保護のため以下の政策を実施する。

  • 技能実習制度:技能実習法の厳正な運用のため、技能実習機構の機能強化及び労働監督機能強化のための人的・経済的資源の投入を行う。2国間協定において、強制労働につながる債務負担をなくすための措置をとる。また、外国人労働者の雇用管理指針に則った措置の周知を含む、外国人技能実習生、実習実施者その他関係者の意識啓発及び訓練を行い、中小企業の実習実施者にはその取組みの支援を行う。
  • 特定技能:特定技能に基づく外国人材の受入れにあたっては、関係法令の厳正な運用、十分な監督機能を果たすための人的・経済的資源の投入を行い、職場移転の自由を保障する。2国間協定において、強制労働につながる債務負担をなくすための措置をとる。また、関係する企業に対し、意識啓発及び支援を行う。
  • その他外国人の権利保護のための政策:国内外のサプライチェーンにおける外国人労働者の課題(特に労働における基本的原則及び権利に関するもの)に取り組むため、人権DDを含むサプライチェーン管理を促進する。また、外国人労働者の相談窓口について、母語による相談の提供、法律専門家との連携などにより、アクセス可能性を向上させ、実効的な解決に結びつくシステムとする。
  • 国民と外国人の双方が尊重し合える共生社会を実現するため、『外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策』で掲げる生活者としての外国人に対する支援等の様々な取組みを推進し、これを広く社会に発信する。

人権デューディリジェンス及びサプライチェーン:

 

 政府は、企業による指導原則に基づく人権デュー・ディリジェンス及びその国内外のサプライチェーン(定義要検討)における人権尊重のための取組みを促進するため、以下の政策を実施する。

  • 指導原則及び責任ある企業行動に関するOECD DDガイダンスを基礎として、人権DDに関する実用的かつ実行可能なガイドラインを策定し、その利用促進のためのツールを提供する。この際、人権に対するリスクの特に高い産業分野や人権の個別課題(強制労働/児童労働/人身取引等)については、これに特化したガイドライン策定を行う。
  • 企業の競争力を高める観点から、人権DDとともにこれと相互補完的な取組みとして、企業のステークホルダーとの対話の取組みを促進する。具体的には、関連する企業の積極的取組みにつき、事例を収集し、その普及のための措置を行うことにより、支援促進する。労働の分野については、中核的労働基準及び集団的労使関係の保障を前提として、ILO多国籍企業宣言に従い、労使対話によって労働課題に対処する建設的労使関係に関する事例やステークホルダーとの協働で労働環境の改善や社会課題への取組みを行う事例を含む。
  • 企業の人権DDを通じて明らかになった海外における課題の解決を図るため、二国間または多国間の枠組みを通じた効果的な対話や必要な制度整備支援などを行う。 
  • 中小企業特有の課題に配慮し、中小企業向け人権DDガイドブックの作成、中小企業の積極的取組みの収集及び普及、適切な情報提供並びに必要な支援を行う。
  • 人権DD及びサプライチェーン上の取組みに関する相談窓口の設置、専門家紹介などの支援を行う。在外公館や関係省庁が連携して政策一貫性を図り、また企業のILO多国籍企業宣言及びOECD多国籍企業行動指針に沿った行動を促進するため、それらの周知徹底を図る。

■公共調達:

 

 政府は、公共調達に関わる人権について保護の責任を果たし、関連する企業の人権尊重の取組みを促進するため、公共調達について以下の政策を実施する。

  • 既存の女性活躍推進やワーク・ライフ・バランスの取組みを促進する加点評価の仕組みに加え、人権を尊重する取組みについても加点対象とすることを検討する。
  • 公共調達に関わる公務員への啓発及び研修を実施する。
  • 既存の公共調達に関する苦情処理体制について、人権について負の影響を受ける人々が実効的な救済にアクセスできるようにする観点から手続を改善する。
  • 地方自治体の公共調達においても、上記政策の趣旨に沿った取組みがなされるよう、必要な支援を行う。

■救済へのアクセス:

 

 政府は、人権について負の影響を受ける人々が実効的な救済に容易にアクセスできるように、以下の政策を実施する。

  • NCPについて、①当事者による問題解決を支援するため、担当3省間の連携を強化・円滑化し、②全ての当事者からの信頼を確保するため、公平性と中立性を担保し、③制度の認知度と理解を高めるため、NCPの機能やプロセスについて広報活動を行う。
  • 業界団体レベルの苦情処理メカニズムなど、民間の取組みを認知するよう努め、必要に応じて支援を行う。