NAP策定への意見:市民への負の影響(ヘイトスピーチ)

ビジネスと人権に関する行動計画(NAP)策定への市民社会からの意見書

(2020年1月23日)

【現状と課題】

  • 日本は1995年に人種差別撤廃条約に加入したが、就職や入居など社会生活における人種差別を禁止する法律は制定されていない。2017年3月に法務省が公表した外国人への差別に関する実態調査によれば、多くの外国人が、職場におけるハラスメントやヘイトスピーチの被害に遭っていることが報告されている。また、国連や民間団体の報告においては、アイヌの人々や被差別部落出身者に対する就職差別等の事例も報告されている。さらに、国連の人権条約機関や、国連人権理事会の普遍的定期的審査においても、雇用分野を含む社会生活一般における人種差別を禁止する立法の制定や、雇用における差別を禁止するILO111号条約の批准を求める勧告が繰り返し出されている。
  • ヘイトスピーチに関しては、2016年に「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」が制定され、これを受けて、通信関連業界4団体が「違法・有害情報への対応等に関する契約約款モデル条項の解説」 にヘイトスピーチの問題についても記載されるなど一定の進展も見られるところではあるが、インターネット上でのヘイトスピーチは未だ猖獗を極めており、国際機関やヘイトスピーチの被害者からは対策が不十分だと指摘されている。

【NAPへの提言】

  • 政府においても、市民社会とも協力しながらヘイトスピーチ(特にインターネット上のヘイトスピーチ)の現状と被害についての実態調査を定期的に実施すべきことをNAPで言及していただきたい。また、政府関係者と通信関連業界関係者やヘイトスピーチの被害者関係者が同席して議論するプラットフォームを設置した上で、インターネット上のヘイトスピーチについて、企業による自主的・迅速な削除を要請し、一定の場合には政府においてもヘイトスピーチの削除要請を行うことを可能にすべきである。

認定NPO法人ヒューマンライツ・ナウ