NAP策定への意見:ビジネスと子どもの権利

ビジネスと人権に関する行動計画(NAP)策定への市民社会からの意見書

(2020年1月23日)

【現状と課題】

  • 子どもは権利の主体であると同時に、社会的に脆弱な立場に置かれやすく、特別な配慮や保護が必要とされる。
  • 企業活動が子どもにもたらし得る負の影響は多様であり、海外のサプライチェーンにおける児童労働、子どもの保護者や若年労働者の強制労働や搾取的労働、インフラ開発や大規模農業投資における土地収奪や生活基盤・環境の破壊、国内の保護者の低賃金や非正規雇用の拡大、長時間労働、ワークライフバランスなど子どもの養育に関わる課題、子どもの性的搾取や商品化、子どもにとって安心・安全ではない、国際基準を満たさない製品・サービス、マーケティング・広告・マスメディアの子どもへの影響など、職場、市場、地域・環境において多岐に渡るが、こうした幅広い影響への認識は政府・企業ともに弱く、また児童労働など一部の課題を除いて人権デューディリジェンスのプロセスに位置づけられていないのが現状である。

【NAPへの提言】

  • NAP策定においては、2012年に国連グローバル・コンパクト、ユニセフ、セーブ・ザ・チルドレンが策定した包括的な枠組みである「子どもの権利とビジネス原則」原文日本語、および2013年の国連子どもの権利委員会による一般的意見16「企業セクターが子どもの権利に与える影響に関わる国の義務について」原文日本語の内容を十分に踏まえ、企業活動が子どもにもたらしている負の影響について情報収集・集約を行い、現状への認識を高めると共に、日本の政策、法律、規制、基準等における措置とのギャップを特定することが求められる。
  • また、企業に対しては人権デューディリジェンスに子どもの権利尊重の視点を取り入れることを求め、政府として子どもの権利の尊重・推進のための法的・制度的な枠組みを構築し、権利侵害が生じた場合の救済措置を整備・改善すると共に、子どもを含む社会的脆弱層の救済措置へのアクセスを確保するための社会的・経済的・司法的障壁を取り除くことが求められる。
  • NAP本文における横断的視点としての「児童の権利の保護・促進」に、上述の「子どもの権利とビジネス原則」および一般的意見16「企業セクターが子どもの権利に与える影響に関わる国の義務について」を包括的枠組みとして位置づけ、その実践を促すことが求められる。

(公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン)