NAP策定への意見:消費者

ビジネスと人権に関する行動計画(NAP)策定への市民社会からの意見書

(2020年1月23日)

【現状と課題】

  • 消費者の権利は、2004年の消費者基本法に明記されてから歴史が浅く、消費者庁を中心に消費者政策が制度化・実施されているが、消費者の被害・不利益は依然として多い。また企業は顧客満足等に取り組み、最近では消費者庁による消費者志向経営も促進されているが、企業の方針に消費者の権利の尊重が明記されることはほとんどなく、消費者の権利の確保が十分とはいえない。
  • 世界的に個人データの活用が促進され、そこにAIの活用が加わり、消費者・個人は利益の享受だけではなく、負の影響としてプライバシー侵害の問題にさらされている。現在、日本においては消費者・個人の理解が不十分な現状ともあいまって経済優先によるプライバシー権の問題や消費者のコントロール権が形骸化している状況にある。
  • 人権教育については部分的には実施されているが、国際的に認められている内容や指導原則の枠組みへの理解が十分ではないことから、企業の事業活動における人権尊重、そして被害を受ける個人の申し立てや救済も不十分な状況にある。

【NAPへの提言】

  • 消費者の権利については、その必要性も重要性もいまだ企業や消費者に根付いているとは言い難く、消費者の安全、選択、適切な情報、教育、意見の反映、救済などの消費者の権利を尊重した事業活動の促進とともに、現在の消費者政策の一層の充実が求められる。
  • データを活用した多様なビジネスの急速な進展に即した、個人のプライバシーやコントロール権を重視した制度設計が急務である。
  • 企業および下請け企業、サプライヤーの行動により生じる人権や環境への負の影響について、企業が方針、実施計画、人権デユー・ディリジェンスの取組み等を毎年、統合報告書やサステナビリティレポート、さらにウエブなどで報告するなど、企業の情報開示を促進していくことが必要である。このことによって、企業の事業活動における人権の取組みが進展し、企業が説明責任を果たすことにつながるのみならず、個人の人権意識の向上とエシカル消費の普及にもつながるものと考えられる。
  • 企業の事業活動において人権が尊重されるかどうかは、個人が、国・地方自治体や企業等の組織の一員として、さらには一人の市民・消費者として、指導原則で求められている人権の内容および枠組みを理解して、政策を実施する、事業活動を実施する、さらには市民・消費者として行動することにかかっている。したがって、政府はそれぞれの主体に対して、あるいは各主体が、現在求められている人権の内容および指導原則の枠組みについて、広く体系的に人権教育を進めていく必要がある。そして、政府はこれらの取組みを促進するために、地方自治体、学校、市民・消費者団体、国際機関などと連携をしていく必要がある。

サステナビリティ消費者会議、一般財団法人日本消費者協会