NAP策定への意見:人種差別

ビジネスと人権に関する行動計画(NAP)策定への市民社会からの意見書

(2020年1月23日)

【現状と課題】

  • 日本は1995年に人種差別撤廃条約に加入したが、就職や入居など社会生活における人種差別を禁止する法律は制定されていない。2017年3月に法務省が公表した外国人への差別に関する実態調査によれば、外国人であることを理由に入居を断られた経験がある人が約4割、就職を断られた人は約25%に上る。また、同調査では、多くの外国人が、職場におけるハラスメントや、ヘイトスピーチの被害に遭っていることも報告されている。
  • 人種差別撤廃条約では、人種、皮膚の色、世系または民族的もしくは種族的出身に基づくあらゆる差別を含むが、国連や民間団体の報告においては、アイヌの人々や被差別部落出身者に対する就職差別等の事例も報告されている。また、国連の人権条約機関や、国連人権理事会の普遍的定期的審査においても、雇用分野を含む社会生活一般における人種差別を禁止する立法の制定や、雇用における差別を禁止するILO111号条約の批准を求める勧告が繰り返し出されている。

【NAPへの提言】

  • 日本で生活する外国人及び外国にルーツを持つ者については、単に労働力の受け入れとしての側面に注目するのみではなく、日本社会の構成員として捉える必要がある。入居差別や採用差別など労働分野以外の企業活動にも関わる課題であり、今後のビジネスと人権の国別行動計画の策定にあたっては、入居・採用差別や職場でのハラスメントの禁止などを含む包括的な差別禁止法の制定についても検討課題としていただきたい。

認定NPO法人ヒューマンライツ・ナウ