NAP策定への意見:ジェンダー

ビジネスと人権に関する行動計画(NAP)策定への市民社会からの意見書

(2020年1月23日)

【現状と課題】

  • 既に批准したILO100号(同一価値労働同一報酬)、156号(家族的責任を有する労働者)条約の誠実な実施には依然として課題が多い。
  • ILO111号(差別待遇)、175号(パートタイム労働)、189号(家事労働者)条約を批准していない。
  • 2019年に採択されたILO190号(仕事の世界における暴力とハラスメントの撤廃)条約に日本政府は賛成票を投じたが、「賛成と批准は別問題である」との姿勢を表明している。
  • 職場における女性に対する暴力(セクハラ)根絶への消極的な態度と、それを容認するジェンダー平等への意識の低さや固定観念の強さが存在する。
  • 2013年に発生したバングラデシュのラナ・プラーザ倒壊事故に代表される、廉価な製品を生産するために、若く従順で安価な労働力として女性が過酷かつ危険な工場労働に携わっている「途上国」での現状を踏まえ、サプライチェーンにおけるジェンダー問題を認識し、日本企業の国外での活動にあたり、人権基準に合致した労働環境を保障する。
  • 長時間労働を是正しワークライフバランスを実現するための政策的・制度的支援が弱い。
  • ケアワークを正当に評価し男女間で公正な分担を行うための政策的・制度的支援が弱い。
  • 非正規労働者が大きく女性に偏っており(非正規労働者の7割が女性)、特に、子どもをもつシングル女性世帯の貧困率はOECD各国の中で最も高い。

【NAPへの提言】

  • ILO111号(差別待遇)、175号(パートタイム労働)、189号(家事労働者)、190号(仕事の世界における暴力とハラスメントの撤廃)条約を批准する。
  • NAPガイダンスにある「あらゆる分野にジェンダー視点を反映させる」ことを保障する。
  • OECD多国籍企業行動指針を尊重し、その実施をジェンダー視点からおこなう(特にサプライチェーンにおける女性の人権の保障)。
  • NCP(国内連絡窓口)のジェンダー視点を強化する。
  • セクハラについての意識を高め、防止するための研修を義務化する。
  • 日本におけるワークライフバランス実現の最大の障壁である長時間労働是正のための法的・制度的支援を強化する。これは、日本社会の最大の課題の一つである少子高齢化の解消にあたっての喫緊の課題でもある。
  • ケアワークを正当に評価し、平等な分担を推進する:女性、男性すべての人に対し「ケアへの権利」を保障する。
  • LGBT・ノンバイナリーな(二分化できない)性の多様性を尊重する雇用環境を実現するために必要な施策を実施する。

(一般財団法人アジア・太平洋人権情報センター〔ヒューライツ大阪〕)