【優先分野・事項】

  • ①消費者の権利の実効性の確保、②プライバシー権の保護・尊重・救済の枠組みの構築、③人権教育・啓発、④人権全般を網羅した機関の設置

(サステナビリティ消費者会議)


・意見内容

①消費者の権利について、制度・政策と実態のギャップを踏まえた消費者の権利の実効性の確保、②データ駆動型社会への変革を支える個人のプライバシー権の保護・尊重・救済の枠組みの構築、③人権について国民的理解のための教育・啓発、④人権を網羅的・実効的に確保するための人権機関の設置

 

・理由

①消費者の権利の実効性の確保について

 消費者の権利については一定の制度や政策があるが、消費者の権利は2004年の消費者基本法に明記されてから歴史が浅く、企業の方針に明記される例はほとんどなく、その結果、人権デュー・ディリジェンスに基づいた消費者の権利確保の手続きは脆弱であり、制度・政策と実態のギャップが存在する。もちろん多くの企業は顧客満足等消費者の利益のために取り組んでいるが、消費者の権利の確保としては十分ではない。そこで消費者の権利の実効性を確保するためには、制度・政策と現実のギャップを踏まえた施策が不可欠である。

 ビジネスにおける消費者の権利の確保の実態は、ほかにも、昨今の品質に関わる企業不祥事の例や消費生活センターにおける多数の相談・苦情などにおいて見ることができる。消費者庁や地方消費者行政においては消費者の権利の実現に取り組んでいるが、今なお消費者の権利の実効的な確保には課題があると言わざるを得ない。そこで、企業の自主的取組み、国や自治体、さらには消費者団体等による多様な消費者の権利実現のための取組みの拡充が求められる。すべての人は消費者であり、消費者の権利の実効性確保は消費者による他の人権確保にも影響を及ぼすと考える。

②プライバシー権の保護・尊重・救済の枠組みの構築について

 世界的にデータの利活用が促進され、日本においてもデータ駆動型社会への変革の方向性が示されているが、デジタル社会における消費者・個人は利益の享受という正の影響だけではなく、負の影響としてプライバシーの問題が存在する。現在、日本においては個人起点のデータ利活用の促進が謳われてはいるものの、消費者・個人の理解が不十分な現状においては、経済優先の結果になりかねず、プライバシー権の保護・尊重・救済の枠組みの構築が急務である。今後、創造されるであろう多様なビジネス形態において具体的に消費者・個人のプライバシー権を組み込んでいく必要があり、それは日本企業の競争力の確保・向上にも寄与していくことになると考える。

③人権について国民的理解のための教育・啓発について

 ビジネスにおいて人権が尊重されるかどうかは、消費者・個人が政府や企業等の組織の一員として、さらには一人の主権者として、人権尊重の意識のもとに行動できるかに密接に関わってくる。また消費者は商品・サービスの選択を通してビジネスにおける人権尊重に貢献することもできる。したがって消費者・個人に対する人権についての教育・啓発は、ビジネスにおける人権の保護・尊重・救済を強力に支えるものになると考える。

 人権の教育・啓発については部分的には実施されているが、消費者・個人への教育は多種多様であり、他の教育・啓発とは異なるものとして進んでいる結果、必ずしも国民的理解にまでは至ってない。そこでさまざまな消費者・個人への教育と一体化して進めていくことが考えられる。たとえば消費者教育については消費者市民社会の形成への教育として、エシカル消費やSDGsの中の持続可能な消費への教育が行われているが、これらの中核には人権の尊重の考え方があり、これらと一体化した人権教育・啓発によって消費者・個人の理解・行動が大きく前進していくものと考える。

④人権を網羅的・実効的に確保するための人権機関の設置

 人権については制度や政策で推進されているものもあるが、いまだ確立されていないものもある。また制度や政策で推進されていてもその実効性の確保が不十分なものもある。そこで人権の保護・尊重・救済を確実にするための人権機関が不可欠である。

 このような人権機関の設置は日本における人権への取組みを検証し、未解決の課題への制度・政策の実現を可能にし、政策の一貫性にも寄与することになり、ひいてはビジネスにおける人権を保護・尊重・救済の枠組みを実効可能なものにすると考える。