【優先分野・事項】

  • 公共調達、その他実施体制

(一般財団法人CSOネットワーク)


・意見内容

公共調達(政府調達等)を優先課題として国別行動計画における主要な柱の一つに盛り込むべきと考えます。

・理由、意見

【現状と課題】

  • ビジネスと人権を推進する上で、公共調達政策への関心が高まっている。日本の政府調達額は2012年以降16%を超える規模になっており() 、市場への影響力は甚大である。
  • ビジネスと人権に関するものとして、日本の全府省庁では、コンプライアンス義務を遵守させるため、会計法令に基づき法令厳守条項等が契約に盛り込まれている() 。総合評価落札方式においては、「くるみん(次世代育成支援対策推進法)」、「えるぼし(女性活躍推進法)」認定企業への優遇措置の実施や、障害者優先調達推進法の施行に基づく障害者就労施設等からの物品等の調達推進を行っている。
  • 自治体においては、総合評価一般競争入札において、福祉、男女共同参画、公正労働、地域貢献などの社会的価値を導入する動きが少しずつ広がっている。また東京都が2020年に主催するオリンピック・パラリンピック競技大会に向けて「国連ビジネスと人権に関する指導原則」に則った持続可能性に配慮した調達コードが作成されている。
  • 課題としては、これまでの取り組みは、地域や物品、事業等に限定されており、「環境・経済・社会」における持続可能性を包括的に考慮した調達基準の策定がなされていない。

【NAPへの提言

  • 「国連ビジネスと人権に関する指導原則」に則った公共調達のあり方を政策方針として明示する。
  • ILO94号条約(公契約における労働条項に関する条約)の批准が労働者の権利保護にとって重要であることに言及する。
  • サプライチェーンにおける人権状況(強制労働、児童労働の禁止、差別禁止、労働条件、職場環境、労働者の健康への配慮など)をチェックする規準枠組づくりに言及する。
  • 公的資金が使われる事業での人権保護体制と手続きの確保を契約の中で明示し、実行を監視できるようにする。
  • 調達先企業の中の、特に中小企業への支援を拡充する。
  • 公共調達における人権侵害があった際に、適切な救済措置へのアクセスを担保する機能を創設する。または、同機能を有する適切な人権機関を設置する。
  • 公共調達の重要性・専門性に鑑み、大学等における調査研究を促進するとともに、行政職員に対する研修を強化する。
  • 人権侵害のリスクが高い国・地域(紛争影響国を含む)における事業のための調達の際、企業に対して適切な人権デューデリジェンスの実施と結果の報告を義務付けることを検討する。
  • 各国における大使館・領事館、JICA、JBIC、JETRO等は、途上国・新興国におけるビジネスと人権に関するリスク情報を収集し、本邦企業に随時情報提供するとともに、政府調達においても人権侵害への加担がないよう、適切なモニタリングに資する情報提供をする。また同プロセスにおいて、NGO等の市民社会や民間企業等との適切なステークホルダー・エンゲージメントを行う。