【優先分野・事項】

  • 脆弱な立場に置かれやすいグループとしての子どもに対するビジネスの影響と、人権尊重のための措置の明記

(公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン)


 

1 優先分野

脆弱な立場に置かれやすいグループとしての子どもに対するビジネスの影響と、人権尊重のための措置の明記

 

2 意見の理由

「18歳未満の人」と定義される子どもは、その発達特性から特に脆弱な立場に置かれやすく、ビジネスによる負の影響を受けやすく、特別な配慮や保護が必要とされる存在である。企業活動が子どもにもたらし得る負の影響は多様であり、海外のサプライチェーンにおける児童労働、子どもの保護者や若年労働者の強制労働や搾取的労働、インフラ開発における土地収奪や生活基盤・環境の破壊、国内の保護者の低賃金や非正規雇用の拡大、長時間労働、ワークライフバランスなど子どもの養育に関わる課題、子どもの性的搾取や商品化、子どもにとって安心・安全ではない、国際基準を満たさない製品・サービス、マーケティング・広告・マスメディアの子どもへの影響など、国内外の職場、市場、地域・環境において多岐に渡る。しかし、こうした幅広い影響への認識は政府・企業ともに未だ弱く、また児童労働など一部の課題を除いて人権デューディリジェンスのプロセスに位置づけられていないのが現状である。

 

ビジネスと人権に関する国別行動計画(NAP)においては、まず子どもを含む脆弱な立場に置かれ、周縁化されるリスクの高いグループを特記し、これらのグループに対するビジネスによる配慮と人権尊重を促すとともに、人権尊重の責任を促進する規範やイニシアティブの促進が求められる(これはNAPガイドラインにもその重要性が挙げられている)。

 

子どもの権利とビジネスにおいては、2012年に国連グローバル・コンパクト、ユニセフ、セーブ・ザ・チルドレンが策定した「子どもの権利とビジネス原則」(原文日本語) 、および2013年の国連子どもの権利委員会による一般的意見16「企業セクターが子どもの権利に与える影響に関わる国の義務について」(原文日本語)という包括的な枠組みが存在し、これをNAPにおいて明示的に示すことが重要である。昨年12月に発表されたベースラインスタディ報告書では、ビジネスと人権に関する基準やイニシアティブの支持に関連し、「子どもの権利とビジネス原則を関係機関に周知した」(31ページ)とあるが、周知するのみならず、政府としてこれら枠組みを踏まえた対応策や措置を明確に示して頂きたい。

 

その前提として、企業活動が子どもにもたらしている負の影響について政府は情報収集・集約を行い、現状への認識を高めると共に、日本の政策、法律、規制、基準等における措置とのギャップを特定し、それに対する対応策をNAPに盛り込むことが求められる。その対応策としては、企業に対して子どもの権利の尊重およびデューディリジェンスを要求すること、また政府として子どもの権利の尊重・保護のための法的・制度的な枠組みを構築し、権利侵害が生じた場合の救済措置を整備・改善すると共に、子どもを含む社会的脆弱層のアクセスを確保するための社会的・経済的・司法的障壁を取り除くことなどが求められる。