「ビジネスと人権」に関する行動計画の原案へのパブリックコメント

反差別国際運動〔IMADR〕


第2章 行動計画

 

1.行動計画の基本的な考え方

  1. 政府府省庁間、企業、一般社会にビジネスと人権の教育と啓発を進める上で、
    1)日本が批准している国際人権条約についてほとんど知られていないのが現状であるため、理解を促すことが重要である。
    2)ビジネスと人権を推進するために改善すべき国内の人権課題について、各条約機関およびUPRからの勧告を整理・リストアップし、教育啓発のプログラムに組み込むこと。
    3)教育啓発の仕事は法務省だけでできるものではない。研究機関やNGOの協力をえて、行動計画のもとでの教育啓発を進めるべきである。

.分野別行動計画

  1. それぞれの「具体的措置」の評価基準が不明確なため、達成指標を可能な限り数値を示して設定すること。また、そこに該当する人権条約機関の勧告も含めること。
  2. 行動計画の開始時と終了時に具体的措置を取り組む分野での状況を調査し、達成度を評価する仕組みを作ること。
  3. 各分野において活動する市民社会との連携・支援を行動計画に組み込み、評価のプロセスへの参画も確保すること。

(1)横断的事項

 

ア.労働において

  1. ハラスメントへの対応の強化において、パワーハラスメントとセクシャルハラスメントに加え、レイシャルハラスメントにも対処すること。さらに、これらが交差した複合的形態のハラスメント(実際には複合的形態お多い)に注意を払い、適切な対処を行うこと。国際基準であるILO190号条約を速やかに批准すべきである。とりわけ、外国人が働く職場が増えていることを考えた場合、国際基準の適用は重要となる。
  2. 技能実習制度のもとでの技能実習機構による各実施企業への定期的検査の頻度および内容・質を高め、結果を公表する手立てを確保すること。
  3. フリーランスや従来型ではない形で仕事をしている人が非常に増えていることが今回のコロナ感染による諸問題で明らかになった。企業という枠組みだけではなく、そうした形態で働く人の人権を行動計画にどう反映させるのか、考えるべきである

イ.子どもの権利の保護・促進

  1. サプライチェーンにおける児童労働の問題と実態について、国際機関、国際および国内のNGOと協力して広く周知する取り組みを行うこと。

ウ.新しい技術の発展に伴う人権

  1. ヘイトスピーチに関して、「ヘイトスピーチ解消法」に加え、「部落差別解消推進法」と「アイヌ政策推進法」(いずれも略称)についても参照すること。

(2)人権を保護する国家の義務に関する取組

 

イ.開発協力・開発金融

  1. サプライチェーンにおける児童労働、現代奴隷、債務労働、女性の性的搾取、劣悪な労働条件などの人権侵害について、監視を行い、必要に応じた措置をとれるような仕組みを、企業およびNGOも含む民間に協力を求めて実施すること。

エ.人権教育・啓発

  1. 行動計画の基本的な考え方で述べた意見と同じ。
  2. (オ)好事例の表彰においては、選考メンバーに人権問題に取り組む市民社会組織を含めること。

その他、全般的なことに関わるコメント:

  1. 人権教育の計画立案および実施において、行動計画の具体的措置(救済も含む)の策定や実施において、さらには国際協力やサプライチェーンにおける諸課題の対応や実施において、「国内人権機関」が果たす役割は非常に重要である。事実、諸外国の国内人権機関の間では、ビジネスと人権に係わる人権問題への対処において、緊密な連携がとられている。これは政府の省庁が担える仕事ではない。長年、国連人権理事国を務めてきた日本にとって、パリ原則に基づいた独立した国内人権機関をもつことは不可避である。
  2. ビジネスと人権の国内行動計画を実施するために必要となる、未批准の国際人権条約およびILO条約の批准について検討を行い、ロードマップを明らかにするべきである。